"スイスのワイン…?"

ヴァレー

スイスといえば思い浮かべるのは、精密時計、スキーリゾート、銀行、保養温泉、山をバックに歌うハイジなどがあり、 食べ物はというと、エメンタール(Emmental)やグリエール(Gruyère)で代表されるチーズ、チョコレートやナッツなどを使った おいしい料理があります。

でも、スイスワイン…となるとご存知ない方も多いのではないでしょうか。
国別のワインの生産量では、 圧倒的に多いのがイタリア、フランス、スペインですが、九州と同じぐらいの面積のスイスでは、山の斜面を利用して1万5000ヘクタールものブドウ畑があります。 ちなみにスイス国内産ワインの85%は総人口の18%が暮すフランス語圏で、12%は総人口の65%が暮すドイツ語圏で、3%は総人口の10%が暮すイタリア語圏で造られます。

限られた面積の畑と人件費にもかかわらず、この20年の間に、高度な技術と情報の交換のおかげで、醸造の質が上昇してきたおかげで、ボルドーやブルゴーニュのようには値段が張らず、しかしスイス人のように実直で、スイスの自然のようにクリアーなワインが造られるようになりました。

面白いことに、スイスの国民一人当たりのワイン消費量となると、世界でトップ6(2005年)に入るワイン消費大国なのです。ちなみにトップはフランスです。 一定の品質を保つためブドウの生産量を国や地方が制限しているために、ワインの輸出量は生産量の1.5%ほどしかなく、日本ではなかなか手に入れることができません。

cheese fondue

周りを5カ国に囲まれ4ヶ国語を公用語とするこの国では、素晴らしい伝統的な地方料理とトップクラスのシェフによる料理があります。チーズフォンデュやラクレットをはじめとするスイス料理はもちろんですが、これらのレストランでは、スイスワインと洗練された料理のマリアージュが演出されます。 またここ数年、寿司にワインが合うというスイス人が増えています。


スイスのワイン産地

スイス地図

フランス、ドイツ、オーストリアに囲まれた美しい国スイスでは、湖の周りに広がる比較的なだらかな土地、また標高500mから1100mの高地の斜面一帯に石を積み上げパッチワークのように広がる棚田でぶどうが栽培されています。
その高さからぶどうの栽培には不向きと言われていましたが、実際は美しい湖と河から反射される熱、そしてフェーン(föhn)と呼ばれる温かい風と、アルプスの山々が北風から畑を守り、標高差を感じさせない品質の良いぶどうが造られています。

ヴァレー(Valais)州は、気候が乾燥して夏季は暖かく、スイスのカリフォルニアと呼ばれています(左写真)。 ローヌ川沿いの谷に20000以上の生産者によりスイス随一のワイン生産量を誇ります。 ここでは、白のシャスラ(Chasselas)、 赤のピノ・ノワール(Pinot Noir)に加えてプティ・タルヴァン(Petit Tarvine)、ユマーニュ・ルージュ(Humagne Rouge)、 コルナラン(Cornalin)などこの地にしかない希少で古い品種のワインが造られています。 またドール(Dole)はピノ・ノワールとガメイのブレンドで作られるこの地域を代表する赤ワインの一つです。

ついでワイン生産が多いのは、ヴォー(Vaud)州で、レ・マン湖の北岸に沿って、ニヨン(Nyon)とモルジュ (Morge)の間にひろがるラ・コート(La Côte)。 オードリーヘップバーンが晩年を過ごしたトロシュナ(Tolochenaz)村はここに あります。 また、ローザンヌからモントルーの間、ユネスコの文化遺産に指定されている ラヴォー(Lavaux)、更に南に下がってシャブレー(Chablais)、そしてヌーシャテル湖の南にある州の北部の4つの地域が代表的です。 白ワインが70%を占め、なかでもシャスラはスイスを代表する白ワインといえるでしょう。

ヌーシャテル(Neuchatel)州では、シャスラとピノ・ノワールの栽培が盛んで、ピノ・ノワールから造られ、ヤマウズラの目を意味するウィユ・ド・ペルドリ(Oeil-de-Perdrix)という名のロゼワインも世界に知られています。

ティチーノ(Ticino)州はスイス南部に位置し、イタリア語圏に属しています。 温暖な気候に恵まれメルローが代表的です。

昔からワインは造られていたんですか…?"

ブドウの栽培は紀元前3000-1800年にすでにあったことを示す野生のブドウの種がジュネーブ(Geneve)やヌーシャテル(Neuchatel)で発見されています。紀元前100年ごろには、シーザーが率いるローマ軍が、アルプス北部にワインとその生産技術をもたらしています。
そんな事実が永世中立国になった一つの理由なのでしょうが、平和な時に湖に面する斜面やアルプスの谷がブドウ畑に変えられていったのが、今日のワイン産業を支えているのでしょう。

スイス国外での評価はどうなんでしょう?

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日本ではスイスワイン研究家の井上貴子さんがスイスワインのすばらしさを著書「霊峰に育まれたスイスワイン」(2001.9月出版)の中で解説しておられます。 また、カナダ人の外交官のJohn C.Sloanは著書「The Surprising Wines of Switzerland」(1996年出版)で詳しく紹介しています。



どんなブドウ品種があるのですか…?"

スイスで栽培されるブドウは50種類にものぼり、代表的な白ワインのシャスラと赤ワインのピノ・ノワール種、ガメィ、メルロなどの他にも、スイスにしかない希少な品種もあります。 また地方によって、異なる名称で呼ぶこともあるので、少し聞きなれない名前を耳にされるかもしれません。

赤ワイン用ぶどう

ピノ・ノワール ブルゴーニュ地方を発祥とする赤ワイン用の品種で、スイス全域に見られる最もメジャーなぶどうです。(全栽培面積の30%)スイスでは、このピノ・ノワール種を別名ブラウブルグンダー、クレブナーシュペートブルグンダーと呼ぶこともあります。栽培される地方によって、ライトタイプのワインからフルボディタイプのワインまで様々なタイプの赤ワインを生み出します。
Pinot Noir このぶどうから造られるスイスワインは 
ガメイ フランスのボジョレー地方を発祥とする赤ワイン用の品種。スイスでは、西部で主に栽培おり、ワインはボジョレーと同じく、フルーティーで軽いワインに仕上がる。
Gamay このぶどうから造られるスイスワインは 
メルロ フランスのボルドー地方を発祥とする赤ワイン用の主要品種の一つです。 イタリアでも広く栽培され、イタリア赤ワインでは4位の生産量を誇ります。 スイスでは、イタリアと国境を接するティチーノ(Ticino)州周辺で主に栽培されています。 香りは少ないが、比較的タンニンのしっかりした、ジューシーでバランス良い、フルーティーな赤ワインを生み出します。
Merlot このぶどうから造られるスイスワインは 
ガマレ スイスでガメイ(Gamay)とライヘンシュタイナー(Reichensteiner)種を掛け合わせ、1970年代初期に作り出された新種のぶどう種。主としてヴォー(Vaud)やヴァレー(Valais)州で育てられる。バランスが良く、熟成と共に美味しくなる。
Gamaret このぶどうから造られるスイスワインは 
カベルネ・ソーヴィニヨン 最もよく知られたボルドーの赤ワイン用品種。 世界中で栽培され、力強くなめらかなタンニンをもち、長期熟成に向くワインとなる。スイスでは珍しい品種とされている。
Cabernet Sauvignon このぶどうから造られるスイスワインは 
シラー フランスのコート・デュ・ローヌ地方発祥の赤ワイン用の品種。スイスでも最近注目を浴びつつある品種で、フルーティで色濃く、骨太のしっかりとしたタイプのワインが造られる。
スイスでは主にヴァレー(Valais)州で栽培されていますが、まだまだ生産量は多くはない。
Syrah このぶどうから造られるスイスワインは 

白ワイン用ぶどう

シャスラ スイスで最も多く栽培され、この国を代表する白ワイン用品種。このぶどう種はスイス・ヴァレー(Valais)州では19世紀中ごろから広まり、ファンダン(Fendant)と呼ばれ、ドイツ語圏ではグートエーデル(Gutedel)とも呼ばれる。非常に繊細で、フルーティでバランスの良いワインを生み出し、フレッシュなワインの中にはほんの少し微発泡するものもある。
別名: ファンダン
Chasselas このぶどうから造られるスイスワインは 
シャルドネ フランスのブルゴーニュ地方を発祥の地とし、今ではアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリなども含め、世界的にポピュラーな白ワイン用品種。 オーク材の樽を使わなければ、柔らかでフルーティなワインに仕上がり、オーク樽を使うと、年月と共にスモーク、バニラ、キャラメル、バターの香りをかもし出すようになります。 その人気と平凡さ故に、一部の愛好家には遠ざけらていますが、多くの国で広く好まれています。 スイスでは、ヴァレー州に1900年代初頭に紹介され、全体にパンチのきいた、コクのあるワインが造られます。
Chardonnay このぶどうから造られるスイスワインは 
リースリング ドイツで広く栽培されている白ワイン用品種で、マスカットなどのフルーツを想わせる香りが特徴のワインが造られます。 上質な白ワインとしては、シャルドネ、ソヴィニヨン・ブランと並んで3大人気ワインの一つです。 イタリア、フランス、アメリカ、オーストラリアなどでも広く栽培され、辛口から甘口まで様々なワインが造られます。 世界的にはミュラー・トゥルガウ(Müller-thurgau)という名称で知られています。
別名: ミュラー・トゥルガウ
Riesling このぶどうから造られるスイスワインは 
ピノ・グリ スイス全域で栽培される白ワイン用品種で、ヴァレー(Valais)州ではマルヴォアジー(Maovoisie)と呼ばれます。 遅摘みぶどうで造られた、アルコール度の高い上質のデザートワインが特に知られています。
別名: ピノ・グリージョ
Pinot Gris このぶどうから造られるスイスワインは 
シェナン・ブラン パイナップルや白桃にも似て、さっぱりした甘みやとろけるようなそのフルーツ感を醸し出す。
Chenin Blanc このぶどうから造られるスイスワインは 
プティタルヴィン アミンニュという品種と並び、ヴァレー州に古くからある品種です
Petite Arvine このぶどうから造られるスイスワインは 
パイエン ヴァレー州に古くからあり、古くからハイダとも呼ばれ、異教という意味を持っています。ソーヴィニヨンブランと近縁の品種です。
別名: ハイダ
Païen このぶどうから造られるスイスワインは 
ハイダ ヴァレー州に古くからあり、ヨーロッパ一高地で栽培されるぶどうとしても知られています。 パイエン(異教)とも呼ばれ、ソーヴィニヨンブランと近縁の品種です。
別名: パイエン
Heida このぶどうから造られるスイスワインは 
ドラル シャスラとシャルドネを交配して造られた白ワイン用ぶどう種。スイスで少量が栽培され、ティッツィーノ(Ticino)のDOC、ヌーシャテル(Neuchatel)のGUB、ヴォー(Vaud)州におけるAOCワインなどに使用される。デリケートなフルーツのブーケ、さわやかな酸味とアロマが加味される。
Doral このぶどうから造られるスイスワインは